薬学徒の仮暮らしブログ

旧帝大薬学部に在籍する人のブログ。大学受験、大学生活、薬学部、研究について気ままに書きます。

Drug Delivery System (DDS) とは?

こんにちは、ありえってぃです。

 

今回は

Drug Delivery System (DDS) とは?

というテーマで、どちらかというと聞いたことないという方向けにざっくり解説していきたいと思います。

 

コンテンツ

1.DDSとは?

2.DDSの3本柱

①吸収改善

②放出制御(コントロールドリリース)

③標的指向化(ターゲティング)

 

 1.DDSとは?

 

そもそもDrug Delivery System(DDS)は薬物送達システムと訳せます。

読んで字のごとく薬を体の中に送達する技術です。

実は皆さんが飲んでいる薬は、全部が全部同じように体の中を動くことはありません。

例えば、一般に飲んだ薬は小腸から血中に吸収されますが、小腸での吸収が著しく悪い薬もあります。その場合薬が作用するために大量の薬を飲まなければいけなくなります。なかなか厳しいですよね。もっと効率よく吸収させる必要があります。

他にも、体の中から一瞬で代謝されたり、糞尿として排泄されてしまう薬もあります。そうすると、薬が一瞬しか効かないので、頻繁に薬を飲まないといけなくなってしまいます。面倒ですよね。

そして、抗癌剤などの副作用が大きい薬もあります。あれは癌だけではなく、健常な組織にも薬が分布してしまうため起こってしまいます。抗癌剤は基本的に細胞をやっつける薬なので、健常な細胞も殺してしまい、副作用が出てしまうのです。標的部位にだけ届ける必要があります。

 

薬を使った疾患治療で大事なことは、

副作用を減らし、患者さんのQOLを悪化させることなく、薬効を発揮させる

ことです。

そしてこれは、

薬を適切な量、適切な時間、適切な場所に送達する

ことが重要であり、これを実現するための技術がDDSということになります。

 

2.DDSの3本柱

 

DDSにはいろんな技術があり、細かくはまた書いていこうと思いますが、大きく3つの柱があります。(どこぞの国策の三本の矢みたいですが。笑)

 

①吸収改善

 

まず1つ目が吸収改善です。

 

先ほどの例でもあったようになかなか小腸から吸収されない薬もありますが、だからと言って毎回毎回注射していては患者さんへの負担が半端じゃありません。

そこでこの薬の吸収を改善する手法として、吸収促進剤を使ったりや薬をプロドラッグ化するという方法が取られます。

吸収促進剤のイメージは、安全な範囲で小腸膜をこじ開けてその間に薬を吸収させます。プロドラッグ化は薬を吸収させやすい形にしておいて、吸収された後にもとの薬に戻るような修飾を施すという技術です。

 

吸収改善は他のものより見劣りするかもしれませんが、薬を飲むことの簡便さを考えると非常に大事な技術です。

 

②放出制御(コントロールドリリース)

 

2つ目が放出制御で、コントロールドリリースとも呼ばれます。

 

これも例でありましたが、直ぐに体内から消失してしまう薬の場合、頻繁に薬を服用する必要が出てきます。あるいは、薬を飲んだ後、吸収が大変早いために副作用が出てしまうほど体内での濃度が上がってしまう場合もあります。

こうした課題を解決するための技術が放出制御になります。

すなわち、薬を持続的に放出するような剤形にしておくことで、長時間薬が有効な血中濃度に到達している状況を作ることが出来ます。また、吸収が早すぎる薬もちょっとずつしか吸収されなくなるので、副作用も出づらくなります。

 

一日三回のところを、一日一回飲むだけで良いという薬はこうした剤形技術によって成り立っているのです。

 

③標的指向化(ターゲティング)

 

先ほどの抗癌剤の例でもあったように、健常な組織には行かないように、かつ癌組織にだけ活かせることが出来たら、副作用が低減できるのでこんないいことはありません。

 

例えるとするとネット広告です。最近は自分が検索したものに類似する広告がスマホで表示されますよね。これあんた好きやろって。(見透かされてるようで怖いですが。笑)

一方で全然興味ない広告をYoutubeでずっと見せられたら嫌じゃないですか?その広告を出してる会社のイメージ下がりますよね。笑

だからネット広告は、ターゲティングによって、欲しいと思っていそうな人に広告を見せ購買意欲を高めるという主作用を高めると同時に、そうではない人には見せないで会社のイメージ下げるという副作用も防げてるわけです。

 

話を戻すと、これに関しては、実は飲み薬ではなくて注射剤の話になってしまいますが、

イメージとしては、ある標的組織を認識する部品付きのキャリアに薬を搭載することで、標的組織には行くけど健常な組織には行きにくくなって副作用も減るという事です。

 

 

 以上がDDSのおおよその話でした。

まとめると、

副作用を減らし、患者さんのQOLを悪化させることなく、薬効を発揮させる

ために

薬を適切な量、適切な時間、適切な場所に送達する技術の事をDDSといいます。

 

今もなお抗癌剤で苦しむ人や、薬のせいでQOLが悪化してしまっている人がいます。

DDSの発展と共にこうした患者さんが救われればいいなと思います。