薬学徒の仮暮らしブログ

旧帝大薬学部に在籍する人のブログ。大学受験、大学生活、薬学部、研究について気ままに書きます。

薬って飲んだ後なぜ効くの? 薬物動態学とADMEについて

こんにちは、ありえってぃです。

 

今回は薬って飲んだ後どうなってるの?という疑問に答えるべく、薬物動態学とADMEについてまとめました。

 

聞いたことないって方や、なんだったっけ?って方にもわかりやすく書いたつもりなのでぜひ読んでいただきたいです。

 

まず、日頃お薬を飲まれるかと思いますが、そもそもどうやって薬は効いているんでしょう?

飲んだ後に体の中のどこにあるのでしょうか?

今回はその疑問に回答していきます。

 

 

薬を飲んだ後は、簡単に述べると

 

小腸から血液中に吸収

→血液に載って全身に分布

→肝臓で代謝されるか、腎臓で尿に排泄

 

というプロセスを経ます。

そしてこの各プロセス

吸収(Absorption)、分布(istribution)、代謝Metabolism)、排泄(Excretion)

の頭文字をとってADMEと呼びます。

 

 

それでは具体的にそれぞれのプロセスを細かく見ていきましょう。

 

 1.吸収 Absorption

 

なんとなく吸収って言われるとイメージしやすいですね。食べ物と同じで薬も基本的には小腸で吸収されます。

 

ただ、吸収って何なんでしょうね。体の中に取り込むのは分かりますが、小腸だって体の中のような気がしますよね。笑

 

実は吸収というのは体外から血液中に入ることを指します。

よく考えてみて欲しいのですが、口から何かを食べて便にまでいたる食道から肛門までは一続きですよね。だから実はこの消化器官は体の外として扱うのです。

 

そして小腸の膜を薬が透過して血液に入ったことを吸収というのです。

次の章で説明しますが、血液は全身を流れるので全身に分布することが出来ます。血液は全身に移行できるために、血液に入ることを吸収と呼ぶと思えば理解しやすいかと思います。

少し慣れないかもしれませんが、これを理解してください。

 

ちなみに小腸からでなくても薬が吸収されることもあります。

例えば、皮膚に張るタイプのアルツハイマーの薬があったりしますが、あれも皮膚の下の血液に吸収されて、血液を介して脳に移行するわけですね。

 2.分布 Distribution

 

薬が小腸から血液に吸収されたあとはどうなるでしょうか。

さっき書いちゃいましたが、血液は全身を回るので体のあらゆるところに移行します。

これを分布といいます。

そして疾患部位で効果を発揮することで病気を治すことが出来るわけですね。

 

ただし、全身に分布するからこそ、必要ないところに行ってしまうと副作用が起こってしまうわけです。

 

また、脳にはBlood Brain Barrier(BBB)という障壁があり、なかなか薬が分布しにくくなっており、これが神経疾患を治すのが難しい理由の一つになっています。

 

だからこそ必要な組織に薬を分布させるための技術が必要になってきます。 

karigurashi01.hatenablog.com

 

 

 3.代謝 Metabolism

 

それでは薬はいつまでも体内にあっていいのでしょうか?

病気の時にはもちろん必要ですが、常に薬が効いてたら少し心配ですよね。

副作用が出てしまうでしょう。

なので薬は適切なタイミングで体の中から消えてもらうことが重要となります。

 

体の中にはいらないものを分解する臓器があります。

そう、アルコールでおなじみの肝臓です。

肝臓が薬を分解して体外に出やすくする働きの事を代謝といいます。

 

代謝というとダイエットの事を思い浮かべるかもしれませんが、薬の代謝は基本的に肝臓が行う薬の分解だと思ってください。

 

代謝された薬はもとの薬と違って、尿から排泄されやすくなったり胆汁として消化管に分泌されて糞として体外に出たりしやすくなるように加工されています。

代謝自体は薬を分解しているとイメージしてくれてもいいですが、厳密には薬が体外に出やすく加工することなのです。

 4.排泄 Excretion

 

最後の一つが排泄です。

いつまでも薬が体の中にあっては困るので、いつかは体外に排泄する必要があります。

 

二つパターンがあって、一つは尿中排泄、そしてもう一つが糞中排泄です。

 

尿中排泄はイメージしやすいかと思いますが、腎臓で濾過されていらないものを尿に出すという事です。

 

糞中排泄とは普通あまり言いませんが、代謝された薬は胆汁に分泌されやすく加工されていて、胆汁は小腸に排泄されます。小腸まで行くとそのまま肛門まで行って糞となって出ていくのです。なので糞中排泄はほぼ代謝が担っているようなものですが、今回はあえてまとめて紹介してみました。

 

ここで賢い方は

「胆汁で小腸に薬を分泌したらまた吸収されるんちゃうの?」

と思うかもしれませんね。

ところがそうはならないのが凄い所です。(一部の薬を除く)

先ほど書いた通り代謝された薬は排泄されやすいような「加工」を受けているのと同時に、吸収されにくくもなっているのです。排泄されやすいのと吸収されにくいのは方向性が一緒なので理解しやすいかもしれませんね。

 

 以上をまとめると薬は飲んだ後に、

 

血液中に吸収

→各臓器に分布

→肝臓で代謝を受け糞中に排泄、or 腎臓から尿中に排泄

 

という道筋を歩んでいきます。

薬が効くためには吸収と分布が大事、というイメージがありますが、ただ効くだけでいつまでも体内にあっては毒性が出てたまったもんじゃありません。適切に体外に排泄されるような体内動態特性を持っている必要があるのです。

 

 

今回は以上です、薬物動態学がざっくり理解して頂けたら幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。